ノーカーボンペーパー

 カーボン紙と言えば、昔は紙と紙の間にはさんで複写をしたものでした。この方式はきれいな複写ができたもののカーボン紙をセットする面倒さに加えてカーボン紙を扱う指が汚れる欠点がありました.そこで登場したのが紙の裏側にカーボンを印刷したものです。表面に必要事項を印刷すれば、たちまち複写伝票ができました(この紙は現在でも少数派ではありますが、現役で活躍しています)。しかし贅沢な人々は文字のところだけ発色する複写用紙を求め、やがてこれが主流となりました。

その仕組みは、紙の裏側に染料を含んだマイクロカプセルを塗布しておき、紙の表面に顕色剤を塗布したものに重ねます.上からボールペンなどで圧力を加えるとこのカプセルが壊れて中にあった染料が顕色剤と反応して発色します.

カーボン紙を使わないと言う意味で「ノーカーボンペーパー」がその呼び名として定着しています。

この一見不思議な紙は1953年(昭和28年)にアメリカの NCR社(National Cash Register Co,Ltd 現在の Appleton Papers,Inc)で発明されました。アメリカ国内ではその普及は急速で、数年間でこれまでのカーボン用紙市場の30%を占めるようになりました。この頃日本の複数のメーカーがサンプルを入手して生産への意欲を燃やし始めたのです。ここで彼らが安心してスタートできた最大の原因は、さきほどのNCR社がこの技術を日本で特許申請していなかったことにあったようです。1962年(昭和37年)1月に金星製紙が「カーレス」(カーボン・レスの意味でしょうか?)を発売しました。同年8月には三菱製紙とNCR社の提携発表、細川活版所の「CCP」(ケミカルカーボンペーパー?)の発表などがあり、開発競争に拍車がかかりました.その他では「日本コレス」「富士化学紙工業」「ゼネラル」「日立」「コクヨ」「神崎製紙」などが研究を進めていました。カーボン印刷のエキスパート細川活版は製紙技術を十条製紙に求め、現在の「日本製紙 CCP」として残っています。製紙のベテラン三菱製紙はその化学技術を発明者のNCRに求め、「三菱製紙 NCR」が健在です。神崎製紙は独自に開発を進め、「王子製紙 KSコピー」となり、化学技術と製紙技術を併せ持っていた富士フィルムは1963年4月に「富士フィルム 感圧紙」を発売し現在に至っています.

実用上問題が無くなったとはいえ、対紫外線強度や退色堅牢度それに保存性など、ほとんど全ての面で物理的なカーボン紙に比べてまだ問題があるようです。



11月8日に富士フィルムの富士宮工場(感圧紙製造工場)を見学してきました。

最初は工場長自らが説明に立たれ、恐縮しながらの見学でありましたが勉強になったことや少しがっかりしたこともありました。
紙に対する薬品の塗工工程で、同業他社に比べて高速で効率が良く原料のロスが非常に少ないとの話には感心したのですが、紙を扱うものとしてその扱い方に関しての希望は聞き入れてもらえることなく済んでしまいました。
まず写真撮影は工場の敷地の中に入った瞬間から禁止となり、大いに不満を感じました。次に最初の説明の折、製品を包装してある包装紙の事について意見を述べ,取り上げてもらえたかに感じたのでしたが見学終了後のミーティングで否定されてしまったのはなんとも残念でした。それはこのようなことでした。  何も感圧紙に限ったことではないのですが,最近の紙の「ワンプ」(工場から出荷される紙を包装している包装紙をこのように呼んでいます)は粘着糊を使ってとめてある場合が多いのですが、乾燥する糊を使って包装してもらえないだろうか?というものでした。 これは私達日常に紙を触っているものにとって,かなり切実な問題なのです。粘着糊は包装を剥がす時に手につくことが多く、これが紙(製品)につけば不良品になってしまいます。またこの「ワンプ」は裁断加工したあとの製品(紙)を包むのに使用されています。弊社では感圧紙を包むには感圧紙の「ワンプ」だけしか使いません。それはお得意さんでの印刷材料として間違いを避けるのが目的です。このように再利用されると「リサイクル」がコストがかからずに達成されるのです。さらに印刷物が包まれたとすれば2回分の「リサイクル」費用が節約されたことになります。この話をしたのですが,「ワンプ」もこれを止めている「テープ」さえも「リサイクル」できる材料を使っています,という回答で話が済んでしまいました。しかし「印刷業者」の方からも「あれ(粘着糊)は使い難い」との意見があったそうです。建前論だけの「リサイクル」よりも実質を獲り社会全体を考える方向へ将来向かっていくのは間違いないでしょう。この「ホームページ」をご覧になった製紙会社の方は粘着糊の仕様をできるだけ早く「乾燥する糊」に換えて頂くようにお願いしますその結果は品質が同じならば,当然使いやすい製品が選ばれると思います。


si、しばらく更新をサボっていました、反省しています。
富士フィルムの後日談ですが、その後いろんな機会を捕らえて大阪営業所に依頼したり、交代した所長に直接頼んだり、機会を見てはのアピールに、大阪営業所の要望として出してくれた結果、富士フィルム感圧紙の製品を包装する糊は乾燥性のものに代りました。この結果沢山の業者の方が使いやすさを実感されたようでした。
その後富士フィルムはご存知のとおり、感圧紙の生産設備を日本製紙に譲渡し、感圧紙は日本製紙の勿来工場で生産され出荷されるようになりました。私達の一番心配していたのは包装の糊が替わらないだろうか?という問題でしたが、しばらくはそのままで推移しました。しかしある時気がつけば、亦もとの粘着糊に替わっていたのです。 今度は弊社だけではありません。感圧紙を使用している印刷工場や紙工所から非難やクレームが相次ぎました。そして改めて糊を乾燥性のものに換えることをはじめています。今までは不便を偲んで使っていた物が改良されてさらに後戻りしたら、これは誰でも不足を言うでしょう。こんなことが製紙業界にはいっぱいあります。これからも出来る限り改善に努めたいと思います。



士フィルム  感圧紙


日本製紙  CCP


三菱製紙  NCR


王子製紙  KSコピー


大王製紙  ニューマイクロペーパー

当社では富士フィルム感圧紙をほとんど全種類在庫しています。在庫品は端売りOKですから必要寸法と枚数でご注文ください

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豆知識

1.インクジェットプリンター適性はありません。表面にある顕色剤は非常に水を吸いやすいので、インクジェットプリンターにかけると文字が滲んで酷いことになります。
2.上.中、下を間違えなければ、メーカーが替わっても発色します
3.セット糊だけはメーカ−を守ってください.
4.少しの量で断裁機にかけると押さえ櫛の圧力でカプセルが壊れて発色することがあります


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